時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

モンゴルの傲慢な侵略口実

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。今日は、モンゴルの特徴として挙げた10点のうち、第二点「2)侵略対象国に対し、一方的にモンゴルの支配を受け入れるよう‘通牒’を送り付け、拒否すると有無を言わさず軍事行動を起こした(我が国に対する元寇の経緯もその典型例)」について考えてみることにしましょう。
 
文明諸国間における戦争の勃発は、一般的には、小競り合いや、権利主張、さらには長い外交交渉の末に、それが決裂したことによって、最終的に武力行使に至るという過程を踏むものです。しかしながら、モンゴルは昨日指摘いたしました自己絶対化に基づく拡張主義から、征服対象国に対して大ハーンへの絶対服従を求める‘通牒’がいきなり送り付けられてきます。
 
ガブリエル・ローナイ氏の『キリスト教世界を売った男 モンゴル軍のイギリス人使節』(榊 優子訳・角川選書・1995年)には、侵略実行の手順が記されています。さすがのモンゴルも全くの奇襲ということはなく、「モンゴルでは、外交使節は冒すべからざる存在」として位置付けられており、まずは、書簡を携えた外交使節を派遣いたします。ところが、その書簡、服従か、壊滅かの二者選択を迫る‘最後通牒’なのです。傲慢不遜な”最後通牒”を受け取った諸国は、憤慨し、モンゴル使節に危害を加えたり、殺害することになるわけなのですが、そういたしますと、モンゴル側は、”冒すべからざる存在”に対して危害を加えた行為は「許すべからざる大罪」であると主張して、進軍を開始するわけなのです。
 
すなわち、相手を犯罪者、犯罪国家に仕立てるという巧妙な手口において、侵略行為を正当化させていると言うことができるでしょう。この問題は、今日におきましても重要です。現在でも、自己絶対化の思想のもとに、相手国を一方的に犯罪国家に仕立て上げ、軍事行動を起こしかねない国々が存在しているからです。モンゴルによる災禍は、「自己を絶対化する人々による要求がたとえ理不尽であっても軽視せず、万全の対応をすべし」とする歴史的な教訓を残しているのです。

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(続く)