時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

モンゴル思想の危険性-世界支配のカルト的正当化

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。昨日モンゴルが急速に拡大した理由として、その10の特徴を指摘いたしました。今日はその内の「1)モンゴル人は、「モンゴルが世界を支配するのは当然」と考えるカルト思想の持ち主だった。したがって、侵略行為を当然の権利と考えていた」という点が、現在におきましても、如何に危険な思想であるのかにつきまして考えてみましょう。
 
モンゴル人が、「モンゴルが世界を支配するのは当然」と考えていた理由は、国璽、ならびに、ローマ教皇や征服予定各国に送った外交文書から窺うことができます。キリスト教的王権神授説の影響も見られるとの指摘があるものの、モンゴルの場合、中国の天命思想をさらに世界版にしたような発想であり、その国璽には「天には神しろしめし、地を治めるはチンギス、チンギスこそ神の御力により大ハーンの座につき、あまねく全世界の人々の上に君臨する帝王なり」と刻まれてあったそうです。また、ローマ教皇への文書には、「あまねく全世界がモンゴルに臣従すべしとの神の命令を知らしめたり」とあり、その他の外交文書も大方同じような内容であったようです。すなわち、チンギスは、「神の命令なのだから、どこに侵略しようとも、何を奪おうとも、何をやっても、誰を奴隷にしてもいいでしょ」というわけなのです。
 
‘神の名’のもとにおける拡大主義のイスラム教とも通じる思想なのですが、本当に、神様は、人の不幸が最大の喜びであると公言するチンギスハーンのような悪人に全世界の統治権を与えているのでしょうか。おそらく、チンギスハーンを含めたモンゴルが神として位置付けている存在は、神様ではなく悪魔であったと考えられるわけです。すなわち、悪魔崇拝のカルト思想が、モンゴル思想の本質であったと推測することができるのです(イスラム教が悪魔の思想と言われる所以もこの一方的拡大主義にあるのかもしれません)。
 
このような外交文書を送り付けられた当時のローマ教皇庁やヨーロッパ各国は、傲慢不遜なモンゴルの屁理屈にあきれ果てるわけなのですが、ここで問題であるのは、モンゴルに対し、このような思想は誤った考えであることをいくら理論や理性で説明しても、非文明世界の人々であるモンゴル人は、まったく聞き入れなかったことです。モンゴル軍は、この一方的な屁理屈を理由に、侵略してくるのです。
 
この問題は、今日におきましても重要です。モンゴルを礼賛している中国共産党政権や北朝鮮のように、現在でも、一方的なカルト思想のもとに、国際法秩序や主権平等の原則を無視し、一方的な行動を起こす国々が存在しているからです。モンゴルによる災禍という歴史の教訓といたしましては、「カルト思想の人々による行動には、あきれ果てつつも、侮らず、厳正な対応を採る必要がある」ということなのでしょう。
 
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(続く)