時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

チンギス・ハンは人類史上稀代の詐欺師

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。かくも残忍で野蛮なモンゴル思想の根源はどこにあるのか、といった問題を考える上で、遊牧民族が、得てして、盗賊・匪賊であった点に注目する必要があるかもしれません。中国大陸・ユーラシア大陸には、遥か古代から「匈奴」と称される遊牧民族がおり、毎年、秋の収穫期となると匈奴が武力を用いて農耕民族に脅しをかけて収穫物を簒奪してゆくという状態が、いわば、日常化していたと言うことができます。モンゴルも、こうした遊牧民族の一つであり、もとから、他者の権利(生存権・所有権)を一顧だにしないメンタリティーの持ち主であったようなのです。
 
こうしたメンタリティーは、遊牧民族以外の民族からは、当然、野蛮人として認識されるわけですが、そこで、チンギス・ハンは、自己正当化のためにユダヤ思想、もしくは、その起源となった超古代の一神教思想を悪用することを思いついたのではないか、と推測することができます。
 
ユダヤ教キリスト教イスラム教などの一神教は、すべて超古代に存在していた一神教に起源を発していると考えることができます。この一神教における唯一神絶対神は、宇宙をも含む全世界、存在の全てを司る神であると信じられております。すなわち、幸も不幸もすべて、‘絶対神’のなせる技であると捉えられているのです。まず、この点が、チンギス・ハンに悪用されるようになったと考えることができます。
 
電撃的侵攻に適し、世界制覇も可能なほどの機動力と組織力を備えた騎馬軍団を作り上げたチンギス・ハンは、当然、掠奪範囲を広げようと計画したはずです。その掠奪行為を正当化させるために、チンギス・ハンは、唯一神信仰を借りて、その国璽に「God in Heaven, and Genghis [or later, Gǘyǘk] on Earth, Khan by thepower of God and Emperor of all men(天には神、そして、地にはチンギス[後にグユク])。神の御力によるカーンであって、全人類の帝王」と刻み、天には唯一神という1柱の神があり、地(地球)には、チンギス・ハンただ一人の支配者があることが神の意志であるという、自己中心的な屁理屈をつくりあげたようなのです。

すなわち、神を権威として持ち出してきて、人々の批判精神を封じ、チンギスは、次々に、侵略先の国々の国王や抵抗する人々を亡き者にするという残虐非道な行為を正当化させることになったと推測することができるのです。まさに、チンギス・ハンは、人類史上、神の名の下で略奪を正当化する稀代の詐欺師と言えるでしょう。
 
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(続く)