時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

近代ユダヤ人が遊牧民族的性格を有している理由

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。現代ユダヤ人を特徴づける遊牧民族的性格の起源は、あるいは、元祖、ネオ・ユダヤ人とも称すべきイドメア人に求めることができるかもしれません。
 
紀元前1世紀の頃までのユダヤ人は、モーゼの出エジプトを機に成立した12部族(13部族)から構成されておりました。これらの人々も、ある程度、民族を異にする人々であったようなのですが、「ヘブライ12支族」と総称されるこれらの人々は、先祖伝来のユダヤ人として認識することができます。
 
ところが、中近東のカナーンを中心に居住していた「ヘブライ12支族」社会に思わぬ変化が生じます。それは、アラブ系遊牧民族の族長であったヘロデが、当時、この地域に支配権を及ぼしていたマルクス・アントニウスクレオパトラⅦ世に取り入り、ヘロデ王朝をカナーンの地に開くのです。
 
このことによりまして、奇妙なことに、「ヘブライ12支族」は、ヘロデ王という遊牧民族の異民族を、国王として戴くことになってしまったのです。すなわち、「ヘブライ12支族」にイドメア人という遊牧民族が加わってきたことになります。ユダヤ人は、この時から、ネオ・ユダヤ人を含むようになったことになります。さらに、「ヘブライ12支族」の多くが、キリスト教の成立によってキリスト教徒となりましたので、ユダヤ人(ユダヤ教徒)におけるイドメア人の比率は、高まったのではないか、と考えることができます。このことは、ディアスポラ以降のユダヤ人(ユダヤ教徒)の動向に影響を与えたのではないか、と推測することができます。
 
すなわち、‘イドメア系ユダヤ人’は、遊牧民ですので、その移動先として、中央アジアから北方ユーラシア大陸にかけての遊牧民族の居住地域を選んだかもしれないのです。このことによって、ユダヤ教に改宗したほかの遊牧民もネオ・ユダヤ人となったことでしょうし、また、思想的な影響も相互に与えるようになったことでしょう。また、もとより遊牧民であったため、”流浪の民”の生活には慣れていたのかもしれないのです。
 
近代ユダヤ人の遊牧民族的性格は、このような仮説におきまして、説明しえるのかもしれません。

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(続く)