時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

ユダヤとモンゴルの悪しき相乗効果

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。ガブリエル・ローナイ氏の『The Tartar Khan’sEnglishman』に登場する謎の英国人、ロバートMaster Robertがモンゴルに至るようになった経緯として、昨日は、バビロニア(カルディア)にあったユダヤ教徒のコミュニティーの広域貿易ルート(中国大陸ルート)があった可能性について、指摘いたしました。
 
このルートは、アブラハムを輩出したシュメール文明が、紀元前3000年頃から、当時珍重されていたラピスラズリなどの貴石の入手のため、既に開いていたルートであったと考えられます。ディアスポラ以降、バビロニアへ移住したユダヤ教徒は、このルートを用いて活発な商業活動を行っており、この貿易ルートは、ロバートの時代、13世紀にも維持されていたと推測することができるのです。
 
そして、バビロニアユダヤ教徒は、先祖伝来の12(13)支族とアラブ系イドメア人のネオ・ユダヤ人によって構成されていた点は、注目されます。イドメア系の人々は、遊牧民ですので、そのメンタリティーの近さから、特に中央アジア、中国大陸、ユーラシア北部の遊牧民との間に接点を持っていたのではないか、と考えることができるのです(13世紀に、その接点によって、ロバートはモンゴルに雇われることになったのでしょう)。
 
イドメア系のユダヤ教徒は、「モーゼの十戒」を含む教理を正しく理解していたわけではなかった、と考えられますので、その曲解されたユダヤ教が、遊牧民族に伝わった結果、その国璽に「God in Heaven, and Genghis [or later, Gǘyǘk] on Earth, Khan by thepower of God and Emperor of all men(天には神、そして、地にはチンギス[後にグユク])。神の御力によるカーンであって、全人類の帝王」と刻むような、かくも尊大で傲慢なモンゴル思想が出現したのではないか、と推測することができるのです。
 
すなわち、ネオ・ユダヤ人が遊牧民族ユダヤ教を曲解して伝えた結果、遊牧民族の間にユダヤ教ならびに選民思想を悪用したカルト思想が生じたと考えることができるのです。

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(続く)