時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

世界幸福度調査不必要・害悪論

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。昨今、国連の「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SustainableDevelopment Solutions Network、以下SDSN)」が発表した、2017年版の『世界幸福度レポート』では、日本は、51位で、ノルウェーが第1位であったそうです。一方、他の調査機関の世界幸福度調査では、フィジーや中国が上位にランキングされています。
 
幸福度調査結果の目的が、「第一位となるような国を目指せ」というものでありましたならば、そこには、大きな落とし穴があるように思います。その理由は、どのような状態に幸せを感じるのか、というメンタリティーの如何の問題、思想の如何の問題という視点が欠けているからです。
 
人それぞれ、どのような状況にあって幸福を感じるのかは、千差万別です。例えば、怠惰、そして無為に時間を過ごすことに幸福を感じる人もいるようですし、その逆に、勉強に励んだり、仕事に打ち込んだりし、人生の目標を達成してゆくことに幸せを感じる人もいるでしょう。すなわち、「幸福度」の結果は、その国の国民のメンタリティーや思想の問題と密接に関わっており、幸福度に反映されてくるのです。
 
例えば、怠け者の性格の国民の多い国では、経済発展しておらず、失業状態にあっても、幸福度は高くなります。残忍な性格の国民の多い国が、他国への残虐な侵略を計画・実行いたしましても、その国民の幸福度も高くなるでしょう。従いまして、幸福度ランキングが上位であることを理由に、その国と同じような状態となることを国連が、他の国々に奨励いたしますと、非人道的で、悪魔的な思想までもが、奨励されてしまう結果となると言えるでしょう。
 

ガブリエル・ローナイ氏の『The Tartar Khan’s Englishman』では、チンギス・ハーンの幸福感が紹介されております。チンギス・ハーンは、まずは「What is the greatest happiness in life?(人生で、最も幸せなことは何か)」と部下に質問し、”清々しい朝に鷹狩に出かけて鷹が獲物を捕った時である”との返答を得ると、おもむろに、自らの幸福感を披露したそうです。書くのも憚られるような内容なのですが、「No, this is not true happiness.  The greatest pleasure is to vanquish yourenemies, to chase them before you, to rob them of their wealth, to see theirnear and dear bathed in tears, to ride their horses and sleep on the whitebellies of their wives and daughters.(いいや。それは、本当の幸せではない。最大の喜びは、敵を敗走させて、挟み撃ちとし、彼らの富を奪い、近親者が涙に暮れているのを眺め、彼らの馬に乗り、彼らの妻や娘たちの白い腹を枕にして、眠ることである)」と答えたというのです。

 
仮に、チンギスのような残虐非道なメンタリティの国民の多い国で「幸福度調査」を行い、上位にランキングされ、国連が、チンギスの国ような体制の国となることを奨励しましたら、いったい世界は、どのようになってしまうのでしょうか。

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(続く)