時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

モンゴルの奴隷貿易

 本日も古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。モンゴルの奴隷貿易について、ガブリエル・ローナイ氏の『The Tartar Khan’s Englishman』は、モンゴルの奴隷貿易につきまして以下のように記しております。
 
――The Mongols used their tax system to assure ample stocks of slaves.  In occupied Russia, for instance, Batu Khan’s tax-collectors at first took, according to the eye-witness friar, Piano de Carpine,from each household one child out of every three, and all the men who had no wives.  Spinsters and ‘all paupers’ were similarly taken without more ado and sold into slavery.(モンゴルは多数の商品奴隷を確保するために徴税制度を利用した。托鉢修道士のピアノ・ド・カルピニの目撃証言によれば、例えば、占領地ロシアでは、バトゥ・カーンの徴税吏は、各家庭に対し子供の3人のうちの1人、ならびに、すべての独身男性を差し出させた。婚期の過ぎた女性や貧困者も、同じように、むざむざと簒奪され、奴隷として売りとばされた)――
 
すなわち、モンゴルは、人間を納税物として扱い、合法的に人々を簒奪・略取し、奴隷貿易商人たちに売り渡すことで、莫大な利益を得ていたのです。3月8日付本ブログにて、モンゴルが急速に拡大した理由として、「9)徹底した殲滅作戦を実行した(モンゴル軍の侵略を受けた国々では、国土は焦土と化し、人々は殺戮されるか奴隷となった)」点を指摘いたしましたが、モンゴルの占領地におきましては、その住民は殺戮されるか、奴隷となったことになり、まさに、悪魔の成せる技であると言うことができるでしょう。当時のヨーロッパの人々が、モンゴル人を野獣や悪魔に喩えたことは頷けます。
 
では、その市場は何処であったのか、といいますと、イスラム諸国であったようです。明日は、こうして出来上がった世界大の奴隷貿易システムの問題について扱います。

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(続き)