時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

救世主思想を悪用したチンギス・ハン

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。チンギス・ハンが、超古代思想における「最後の審判の日」を悪用したことにつきましては、以下の点も指摘することができます。
 
『聖書』「旧約聖書」(エゼキエル書第8章14・15節Ezekiel,Chap.8th ,14-15)には、‘タムジTammuz’という名のかつて善政を敷いていた国王の再臨を希求するエルサレムの人々の嘆きについての記述を見ることができます。メソポタミア地方から出土した楔形文字の読解から、‘タムジ’とは、紀元前2500年頃にシュメールの都市国家ウルクの国王であったドゥムジDumuzi the Shepherd Damuzi the Fishermanのことであることがわかっています。ドゥムジは、1)救世主のような善政を敷いた人物とされている点、2)冥界から戻ったとされる点、3)人々がその再来・再臨を希求し続けていた点の3点から、シュメール学者の間には、イエス・キリストの原形は、ドゥムジであるとする説があります。
 
そして、「最後の審判の日」に再臨するのは、イエス・キリストであるとされていますthe Second Coming of Jesus Christ。そのイエス・キリストの原型が、‘タムジTammuz’であることは、超古代思想の預言におきましても、再来する救世主の名は、‘タムジTammuz’に近い発音の名であったと推測することもできます。そこで、チンギス・ハンの名が「テムジン」である点が注目されていきます。いずこからか、――おそらくは‘ユダヤ人ネットワーク’から――この超古代思想に関する知識を得たテムジンの父は、この超古代思想から発想を得て、息子に「テムジン」と名付けたと考えることができるのです。
 
『聖書』「黙示録(暴露録)the Revelation」を読みますと、その再臨が預言されている救世主は、人の不幸を見ることを喜びとするような悪逆非道、残虐無慈悲なチンギス・ハンではないことだけは確かなことです。チンギス・ハンは、超古代思想において預言されている救世主は、悪によって苦しめられている人々を救うべく高い道徳や人格を有している点を無視して、救世主の名のみを悪用し、世界の唯一の‘支配者’となろうとしたと言えるでしょう。同じ『聖書』に預言された存在であるのならば、戦争を他国に仕掛け続けたチンギス・ハンは、むしろ、悪魔の化身、「赤い竜the Red Dragon」であると言えるのではないでしょうか。

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(続く)