時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

モンゴルの拡大理由が教える独裁国への技術移転の危険性

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。チンギス・ハーンが、その領土を急速に拡大した理由について、3月8日付本ブログにて10点を指摘しましたが、今日は、その第6点「6)外国人技術者を登用して、最新の攻城機や火器を用いた」について扱います。
 
モンゴル人は、パオと称される折り畳み式の小さなテントを馬に乗せて、ただただ広い草原を移動して暮らす遊牧民、かつ、馬賊であることから、文明・文化とは無縁の人々であると言うことができます。チンギス・ハンは、いつも同じ服を着ていたといいます。中国共産党の人民服を想起させますが、チンギス・ハンは、文明や文化にはよほど無理解、無頓着な人であり、人生の目的を‘戦争を起こして人々を蹂躙すること’、そして、‘人を自らの意のままに支配すること’のみに置いていた人であったのでしょう。
 
モンゴルの侵入に対して、ヨーロッパ諸国が、冗談であるとして真剣に扱おうとしなかったのも、この点にあります。ヨーロッパの城塞都市を、このようなモンゴル人によって陥落させられるとは、到底思えなかったからです。
 
ところが、モンゴル軍は、次々にヨーロッパ諸都市を攻略してゆきます。ガブリエル・ローナイ氏の『The Tartar Khan’sEnglishman』によると、その理由は、モンゴルが外国人技術者や知識人を雇って、最新の攻城機や火器をつくらせたことにあるそうです。チンギス・ハンの全権外交使節となったマスター・ロバートmaster Robertも、こうした外国人の一人であったと言えるでしょう。
 
文明・文化に無理解、無頓着であっても、チンギス・ハン同様に、‘戦争を起こして人々を蹂躙すること’、そして、‘人を自らの意のままに支配すること’を人生の喜びとし、そのための手段としての文明の利器を利用しようとする指導者もいるのですから、現在でも、こうした国々に高度な先端軍事技術が移転、漏洩したり、有能な技術者が雇われてゆくことは、自らの生存をも脅かすほどの危険性があると言うことができます。昨今の中国共産党政権や北朝鮮情勢を踏まえますと、やはり、歴史の教訓には学ぶべきなのではないでしょうか。

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(続く)