『聖書』が旧約聖書と新約聖書からなる理由
本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。正統ユダヤ教徒の指導者的立場にあった洗礼者ヨハネは、「偽ユダヤ教」を成立・普及させたいヘロデ王によってその首を跳ねられてしまうわけですが、洗礼者ヨハネのもとに集まり、正統ユダヤ教の教えを維持し、ヘブライ王国(ヘブライ12(13)支部族)の正統性ある国王を希求していた人々は、『聖書』によりますと、イエス・キリストの教団に加わり、イエスのもとに再結集したようです。
「モーゼの十戒」をその教えの中心と為す正統ユダヤ教とは、「ヘブライ12(13)支部族」の祖として位置付けられているアブラハムがシュメールのウルの出身であったことに示されますように、紀元前3000年頃にシュメール文明に発祥していた思想・宗教であると考えられます。仮に、この思想・宗教を「シュメール思想」と呼称いたしますと、人類の文明の黎明期から数千年にわたってシュメール思想を伝承してきた人々が、「ヘブライ12(13)支部族」であったとも言うことができるのです。
このような歴史ある正統ユダヤ教が、ヘロデ王によって「偽ユダヤ教」に変質されてしまったことは、先日指摘いたしました。このことは、シュメール思想の断絶をも意味いたしましたので、遥かなる人類文明の黎明期より続くシュメール思想の断絶を防ぎたい人々は、ヘロデによって乗っ取られている既存のユダヤ教教団から離脱し、新たな正統ユダヤ教のための教団をつくらなければならなかったはずなのです。そして、正統ユダヤ教のための新たなる教団こそが、キリスト教教団であったと推測することができるのです。
このように考えますと、『聖書』が、「旧約聖書」と「新約聖書」から構成されている意味を理解することができます。「旧約聖書」こそが、ヘブライ諸族の歴史を綴ると共に、シュメール思想にかかわる重要な経典・書物を含んでおり、シュメール思想の正統的な継承者・解釈者は、ヘロデのユダヤ教団ではなく、むしろ、キリスト教者であることを象徴するために、「旧約聖書」をも携えて、ヘロデのユダヤ教団から離脱した、ということになるでしょう。
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(続く)