時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

正統ユダヤ教の第一神殿と偽ユダヤ教の第二神殿

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。ヘロデ王の問題は、「モーゼの十戒」やその他の戒律を守らないことに留まりませんでした。4月5日付本ブログにて述べましたように、ヘロデ王は司祭長や司祭のポストを売官しましたので、伝統あるユダヤ教司祭の家々の人々は司祭長や司祭になれず、替って司祭長や司祭となったのは、イドメア人などであったと推測することができます。

 『タルムード』としても知られる、ユダヤ教の戒律は、伝統的に司祭長や司祭を務めてきた家々の間で口伝されておりましたので、このことは、正統的ユダヤ教の戒律の断絶、さらには、当時のユダヤ人の二分化を意味したことでしょう。
 
正統的ユダヤ教の戒律やその解釈を守りたい人々は、当然、レビ族の洗礼者ヨハネのもとに集まったはずです。洗礼者ヨハネには、「ヘブライ12(13)支部族」の間で、その先祖(恐らくはシュメールの人々)から伝えられてきた正統的なユダヤ教について最も知識があったのですから。
 
一方、新たにユダヤ教に改宗したイドメア人や新たに任命された聖職者たちは、もとより正統的なユダヤ教についての知識も無く、また、正統的なユダヤ教の教えの意味にも無理解であったわけですので、ヘロデ王の都合にあわせて、恣意的に解釈を変えたり、削除や改竄を加えるようになった、と推測することができます。こうなりますと、ユダヤ教は、変質し、謂わば‘偽ユダヤ教’、‘異端ユダヤ教’となったと言えます。
 
ヘロデ王は、大規模な神殿、第二神殿の建設に着手いたします。それは一見、異民族であったヘロデ王が、ユダヤ教を尊重・保護することを目的としているように見えますが、そうではなく、むしろユダヤ教を破壊するため、もしくは、自らの都合のよいようにつくり変えた‘偽ユダヤ教’のための神殿であったと考えることができるのです。
 
正統ユダヤ教のための神殿が、ソロモンの神殿、即ち第一神殿であり、偽ユダヤ教のための神殿が、ヘロデ王の神殿、即ち第二神殿と言えるでしょう。

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(続く)