時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

『タルムード』が悪魔思想の経典と見なされる理由とは?

本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。‘現在ユダヤ教’の経典として位置付けられている『タルムードTalmud』とは、「モーゼの十戒」の他にモーセが伝えたもう一つの律法とされる「口伝律法」を収めた6部構成、63編から成る膨大な文書群のことです。「口伝律法」を成文化したのが『タルムード』であることになりますが、‘現在ユダヤ教’が「偽ユダヤ教」であって、遊牧民の悪魔思想が入り込んでしまっている理由は、『タルムード』の成立をめぐる以下の6点を考え合わせることで推し量ることができるかもしれません。
 
1)『タルムード』の成立は、ヘロデ王の拡張第二神殿の崩壊後の2世紀代。
2)その内容はラビの教えや解釈を中心としている。
3)司祭長や司祭のポスト、すなわち、ラビのポストはヘロデ王によって売官されていた。紀元前1世紀のヘロデ王の時代に新たにユダヤ教に改宗したイドメア人や新たに任命された聖職者(ラビ)たちは、正統的なユダヤ教の知識も無く教えの意味にも無理解であった。
4)ヘロデ王をはじめ、その後も時の為政者の都合にあわせて、恣意的に解釈を変えたり、削除、改竄を加えるようになったため、時間の経過と共にユダヤ教は変質し、謂わば‘偽ユダヤ教’、‘異端ユダヤ教’とも目される解釈が入り込む余地が生じた。
5)事実、『タルムード』の内容は一貫性に欠けており、しばしば相互矛盾している。
6)『タルムード』はユダヤ教徒の間で教材として使用されているため、よく知られてはいても、キリスト教徒等には得体の知れない書物と見なされた。
 
これらの6点から、『タルムード』に記載されるようになった「口伝律法」やその解釈には、ヘロデ王によって既に改竄されたものが多く含まれていると推測することができるのです。昨日、本ブログにおいて述べましたように、遊牧民系の思想は、安定した人間集団社会を築くのに必要な定住地を持たず、他者を犠牲にして生き残ることを重視していることから、極めて自己中心的で、他者犠牲型の残忍で野蛮な思想です。『タルムード』は、こうした悪魔思想をも成文化してしまった、と言えるのです。
 
こうしてヘロデ王に始まるトップダウン方式の「偽ユダヤ教」は、『タルムード』によって所謂「ユダヤ人(先祖伝来のユダヤ人とネオ・ユダヤ人)」の間に温存され、「ユダヤ人」によって引き起こされたその後の数々の歴史的事象にもその影響を窺うことができ、また、現在の世界情勢においても、その影響を与え続けていると言えるでしょう。

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(続く)