時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

ヘロデ王とチンギス・ハーンの共通点

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。紀元前1世紀のヘロデ王の登場によって、正統ユダヤ教思想が変質するとともに、昨日、指摘いたしましたように、俗世における国家と国民との関係を規定する政治倫理思想におきましても、「国王は国民の下僕」という思想から「国民は国王の下僕」という思想へと変質したと推測することができます。すなわち、紀元前3000年代という人類文明の黎明期より伝えられてきたシュメール思想は、悪魔の思想とも言えるような‘ヘロデ王の思想’の登場によって滅亡の危機にあったと言えるのです。
 
では、この悪魔の思想は、どこに由来しているのでしょうか。ここで、ヘロデ王と同じような残酷・残忍な悪魔的な思想を持つ人物として、チンギス・ハーンが想起されていきます。

ヘロデ王もチンギス・ハンも遊牧民であるという特徴があります。ヘロデ王は、アラブ系の遊牧民族、イドメア人であり、チンギス・ハンも遊牧民族のモンゴル人なのです。では、遊牧民は、どのような人々であるのか、と言いますと、定住地を持たないことに加えて、アラビア半島遊牧民には、『アリババと百人の盗賊』でもよく知られますように、盗賊団をつくって掠奪行為を働くという特徴があります。モンゴルも、侵略と掠奪を生業とする「匈奴」で知られた地域です。
 
宗教思想や政治倫理思想は、国、市、町、村といった人間集団が、集団内の治安や社会集団の調和と安定を如何にして維持すべきであるのか、といった点と深く関わっております。こうした点を踏まえますと、安定した人間集団社会を築くのに必要な定住地を持たず、他者を犠牲にすることで生き残ることのみを考えてきた遊牧民の人々は、人類初の都市文明を築いたシュメール人の宗教思想や政治倫理思想については、無理解、無関心であったのでしょう。

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(続く)