時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

イスラム教に近い「偽ユダヤ教」

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。‘闇の帝王’ともされるロスチャイルド家の元の家名が、モンゴル系であることを示す「カーンKhan」であることは、「カーンKhan」という苗字が、イスラム教徒にも多いことを想起させます。例えば、現在の英国ロンドン市長は、イスラム教徒であってその苗字は、「カーンKhan」です。では、「偽ユダヤ教」とイスラム教はどのような関係にあるのでしょうか。
 
西暦135年頃から、ユダヤ人の離散diasporaがはじまりますと、イドメア系のネオ・ユダヤ人をも含むようになった「偽ユダヤ教徒ヘブライ12(13)支族・イドメア系ネオ・ユダヤ人)」が、何処へ移動し、どのような歴史を辿るようになったのか、と言いますと、3月18日付本ブログにて指摘いたしましたように、ユダヤ教のラビのスタイン・ザルツStain Salts氏の『The Essential Talmud』によりますと、その多くがペルシャ湾沿岸地域、すなわち、バビロニアに移動したようです。
 
7世紀にイスラム教が興りますと、バビロニアイスラム帝国に征服され、長くその支配下に入ることになりました。このことによって、偽ユダヤ教は、イスラム教の影響をも受けるようになったと推測することができます。現に、中近東・パレスチナキリスト教イスラム教の影響を受けるようになっております。マロン派など、パレスチナに広がっていたキリスト教の宗派は、イスラム教の影響を受けて成立した宗派であり、イスラム色が強いそうです。
 
また、イドメア系ネオ・ユダヤ人は、マホメットが同じくアラビア半島遊牧民の出身であったことにおいて、特に、イスラム教と親近感を持つようになったと考えることができます。例えば、「偽ユダヤ教」とイスラム教は、昨日指摘いたしました6点のうち、少なからず、「2)世界支配のために他国の領土を奪う、すなわち、‘征服’という行為を当然の権利と主張している」、「3)目的達成のために、他者の生命を奪うこと、大量虐殺genocideを容認している」において、思想的にも共通しています。
 
このように考えますと、「偽ユダヤ教」は、キリスト教よりもイスラム教と近い関係にあり、13世紀にモンゴルが、実質的にイスラム勢力側に味方した理由ともなるでしょう(モンゴルは、ヨーロッパ・キリスト教世界を暴力によって滅亡させようとし、また、キリスト教徒を奴隷としてイスラム諸国に売り払った)。モンゴルによって征服された西アジアイスラム諸国の人々は、その思想的近似性から、チンギス・ハンにあやかって「カーンKhan」と名乗るようになったのかもしれないのです。現在でも、イスラム過激派組織のISの幹部をめぐって、‘ユダヤ人説’があることとも何らかの関連があるのかもしれません。

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(続く)