時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

イエズス会がキングメーカーになれる理由

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。昨日、イエズス会は、キングメーカーである可能性を指摘させていただきました。では、どのような方法を用いれば、キングメーカーはキングやクィーンをつくることができるのでしょうか。常識的に考えますと、一介の人物を一国の君主のような地位に就けることは、容易いことではないはずです。
 

そこで、まず、第一に注目されてくることは、いわば‘ザビエル信仰’のような信仰があり、この信仰は世界各地に散見されることです。ザビエル象は、イタリアのローマ、チェコプラハ、ドイツヘッセン州ベンスハイムBensheim、米国のウィスコンシン州、マレーシアなど世界各地に建立されています。さらに、中国の上川島で亡くなったザビエルの遺体は分散され、ポルトガルリスボン市やポルト市の他に、インドのゴアのボン・ジーザス聖堂The Basilica of Bom Jesusには右腕下膊が、中国のマカオの聖ヨセフ教会には下腕下膊がミイラ化して保存され、そして、東京には、胸骨の一部が保存されているのです。

 
特に、生前の姿のままでミイラ化させて保存させることは、継続的なケアを施し続けなければ不可能です。ザビエルは、カトリック本体の人ではなく、その外部団体とも言えるイエズス会の人ですので、このようなザビエルへの熱烈な崇拝は奇妙なことなのですが、東アジアには、ザビエル崇拝があり、またザビエル崇拝を支える組織があったと推測することができるのです。すなわち、人々の間に、ザビエルに対する個人崇拝的な組織があり、その組織は、16世紀以降も存続し続けていたことと言えるでしょう。この点から、強固な世界組織こそが、キングやクィーンをつくることができる要因であると考えることができます。
 
そして、フランシスコならぬフランケンシュタインのように、ザビエルは現在でも世界を徘徊しているのかもしれないのです。今日では、世界に広がるキングメーカの共謀ネットワークとして。

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(続く)