時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

イエズス会は幕末史に影響を与えていたのか

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。16世紀、イエズス会のイグナチィウス・ロヨラフランシスコ・ザビエルによって、キリスト教とは似ても似つかぬイエズス会系の奇妙なカルト教が成立するとともに、このカルト教を支える強固な組織もまた世界各地に成立していたようです。以後、その組織は、中国大陸では広東省マカオを中心とした東アジア一帯に存続し続け、日本でも、特に、ザビエルが滞在した薩摩(鹿児島)と長州(山口)を中心に江戸時代を通して密かに温存させていたと推測することはできます。このことは、幕末史を考える上で重要であるかもしれません。
 
幕末に来日したオランダ人医師ポンペ(ヨハネス・レイディウス・カタリヌス・ポンペ・ファン・メールデルフォールJohannes Lijdius Catharinus Pompe van Meerdervoort)はその著書の中で、「『彼ら日本人は予の魂の歓びなり』と言ったザビエルの物語は広く西洋で知られており、これがアメリカ合衆国政府をしてペリー率いるアメリカ艦隊の日本遠征を決心させる原因となったのは明らかである」、と述べているそうです。
 
この言葉からも、ザビエルが、日本国に特に強固な支持母体をつくっていったことがわかりますが、さらに、米国政府によるペリー(マシュー・カルブレイス・ペリーMatthew Calbraith Perry, 1794410日 – 185834日)の派遣と開国要求は、ザビエル、すなわち、イエズス会系カルト教の活動を意識してのことであったこともわかります。
 
米国政府による日本への開国要求は、イエズス会カルト教団を滅ぼすことを目的としていたのか、それとも、日本を開国させることで、イエズス会カルト教団が世界に向けてより活動しやすい体制を整えるためであったのか、そのどちらであったのか、この点が幕末史を考える上で問題となってくることになるでしょう。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。

 
(続く)