時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

フランチェスコ会が非文明礼賛である理由

今日は、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。フランシスコ・ザビエルの真の布教の目的が、人類の非文明化・動物化である可能性は、アッシジのフランチェスコの生立ちからも補われます。
 
フランチェスコ1181年もしくは1182年に、裕福な毛織物商を父に、‘フランス人’を母にイタリア半島中部ウンブリア地方のアッシジで生まれています。もともとの洗礼名は「ジョバンニ」でしたが、「フランチェスコ」という名前で呼ばれるようになった理由は、父親がフランスとの商取引を主としていたこと、そして、フランス人の母親への敬意から、本人がフランス語で歌うことが好きであったことによるようです。フランチェスコは、特に、プロヴァンス(南フランス)の言葉で歌われていた宮廷詩や吟遊詩を吟じていたという点からは、出自不明のフランチェスコの母は、プロヴァンス地方の出身ではなかったか、と推測することができます。
 
そこで、プロヴァンス地方に注目してみますと、プロヴァンス地方の特徴として、イベリア半島に近い点と黒マリア信仰が盛んな点を指摘することができます。712年にゴルドバを陥落させたイスラム帝国は、720年にはピレネー山脈を超えてナルボンヌ以北にまで至っておりますので、プロヴァンスは、イベリア半島と同様にイスラム勢力の影響を受け易い地域でもありました。
 
イエズス会創始者であるイグナティウス・ロヨライベリア半島の出身であり、黒マリア信仰者であったことは、本ブログにて再三にわたって指摘しております。ザビエルもイベリア半島の出身であり、ここにイエズス会フランチェスコ会との間には黒マリア信仰という接点が見いだせるのです。黒マリア信仰とは、非文明礼賛の思想です。

フランチェスコの「物質的な豊かさのみならず、精神的ないし知的な豊かささえも認めなかった」という黒マリア信仰を想起させる非文明礼賛思想は、その生い立ちに依りところが大きいのではないか、と推測することができるのです。

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(続く)