時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

ホロコーストは「黒いユダヤ人」による「白いユダヤ人」の絶滅計画か

今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。‘ユダヤ人’と言いましても、「白いユダヤ人」と「黒いユダヤ人」という区別があることは、インドのみならず、世界規模において言えることであるようです。
 
ユダヤ人’や‘ユダヤ人社会’について、もっとよく知るべきであると考え、現在、『インド・ユダヤ人の光と闇』の著者のお一人である徳永恂氏の『ヴェニスのゲットーにて』(みすず書房、1997年)を読み始めたばかりなのですが、ヴェニスの‘ユダヤ人’について、以下の興味深い記述がありました。
 
――こうしてヴェニスのゲットーは、十六世紀中葉には現在あるようなゲットー・ヌオヴォとゲットー・ヴェッキオを併せた形で(新ゲットーの方が創設は20―30年古い点に注意)、形成されたのだが、その内部で、ドイツ系、東地中海系、スペイン系は、それぞれ別箇のシナゴーク(会堂)、スコラ(教学館)を持ち、別箇の儀礼や風習、言語を保ちつつ共存し、外部に対しては、一つの纏まった独立形態を保っていた(頁7)。――
 
この記述から、‘ユダヤ人’は分裂しており、『インド・ユダヤ人の光と闇』に記述されてあった「黒いユダヤ人」の発祥過程を考えあわせますと、ヴェニスの‘ユダヤ人’のうち、東地中海系とセファルディーのスペイン系には、「黒いユダヤ人」が含まれていたと推測することができます(あるいは、貴族の称号を得たことから「黒い貴族」と称されているヴェニスの‘ユダヤ人’の一部こそ、「黒いユダヤ人」の出身者であるのかもしれません)。
 
今日でも、‘ユダヤ人’と言いましたならば、‘一つの纏まった’集団として捉えられる傾向にありますが、昨日の「イエスマン」の代表のように、民族的にイスラム指導者と近い関係にある人々も存在しております。ヴェニスに限らず、世界中の‘ユダヤ人’は、必ずしも一枚岩ではないのです。そして、この点は、近現代史を考える上でも重要かもしれません。
 
ナチス・ドイツによる‘ユダヤ人虐殺(ホロコースト)’は有名ですが、ナチス・ドイツの幹部の実に60%は、‘ユダヤ人’であったそうです。また、アドルフ・ヒトラーの遺伝子を解析した結果、ヒトラーは、北アフリカ地域の人々と同じ遺伝子を保有していることが明らかとなっており、アドルフ・ヒトラーは、「黒いユダヤ人」であった可能性があるのです。
 
ユダヤ人虐殺(ホロコースト)’の対象となったのが、アシュケナージの「白いユダヤ人」であったことを考えあわせますと、‘ユダヤ人虐殺(ホロコースト)’とは、「黒いユダヤ人」による、自分達とは異なる”ユダヤ教”を奉じる「白いユダヤ人」に対する”宗派的迫害”、あるいは、絶滅計画であった可能性も浮上してくるのです。

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(続く)