「黒いユダヤ人」が隠れイスラム教徒である理由
今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。キリスト教世界、そして、「白いユダヤ人」の世界におきましては、非嫡出子は所謂‘罪の子’として認識される存在です。このことから、心理的に非嫡出子は自らの存在を肯定するような宗教へと近づいて行ったと推測することができます。それが、イスラム教であり、また、バグダットのユダヤ人コミュニティーにおいて、イスラム教の影響を受けて生じていた‘偽ユダヤ教’とも称すべきユダヤ教のセクトであったと考えることができるのです。
イスラム教は一夫多妻の宗教ですので、イスラム教は、非嫡出子の母親が嫡妻4人のうちの一人となって嫡出子として扱われる可能性のある宗教であると言うことができます。また、‘みな兄弟’というイスラムの‘謳い文句’は、家庭に恵まれない非嫡出子たちを惹きつけたことでしょう。‘偽ユダヤ教’につきましては、スタイン・ザルツStain Salts氏の『The Essential Talmud』によりますと、バグダットのユダヤ教の戒律では、婚外子でも嫡出子として扱われていたようです。「黒いユダヤ人」の成り立ちは、奴隷女性を母として出生した婚外子たちや解放奴隷であったそうですので、「黒いユダヤ人」たちは、イスラム教や‘偽ユダヤ教’に親近感を感じたはずです。逆に、「偽ユダヤ教」とは、「黒いユダヤ人」たちが、自らの存在を肯定させるために、『旧約聖書』の曲解を通してつくりだされた異端、という言い方もできるかもしれません。「白いユダヤ人」も「黒いユダヤ人」も‘ユダヤ教徒’でありながら、非嫡出子問題によって「黒いユダヤ人」は、実際には‘隠れイスラム教徒’となっていた可能性を指摘することができるのです。
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(続く)