時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

”シャーロック・ホームズ”と重婚問題

 今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。昨日、H.H.ホームズによる連続殺人の最初の事件が1884年頃に起こり、この年がホームズシリーズの第一作である長編小説『緋色の研究A Study in Scarlet』が発表された年でもあると述べましたが、正しくは、1886年に執筆され、翌1887年に発表されたようであり、お詫びするとともに、訂正いたします。しかしながら、私立探偵のホームズの‘活動’期間が、ほぼ、連続殺人犯のホームズの犯罪期間と重なっていることには、やはり意味があるようです。
 
H.H.ホームズは、1884年にその最初の殺人事件を起こした頃、全米はおろか、英国においてもまったく無名であったと推測することができます。ホームズが有名になったのは、獄中において数々の悪魔的犯罪を告白した文書が出版されて、その極悪ぶりと重婚問題が世間に知れ渡るようになったことによるのですから。そして、1886年に発表されたシャーロック・ホームズシリーズの第一作目の『緋色の研究』も、発表当時は、さほど知られていたとは考えられません。にもかかわらず、『緋色の研究』には、既に、H.H.ホームズとの接点があります。それは、『緋色の研究』が重婚問題を扱っていることです。
 
 『緋色の研究』の主要な舞台は、ロンドンのみならず、米国のソルトレイクシティです。あらすじは、以下のようになります。北アメリカ内陸部の砂漠地帯で、ジョン・フェリアと孤児のルーシーが迷って死に掛けたところを、ブリガム・ヤングに率いられた移動中のモルモン教徒(末日聖徒イエス・キリスト教会の信者)の集団・モルモン開拓者に救われます。彼らは、モルモン開拓者によって建設されたソルトレイクシティ末日聖徒イエス・キリスト教会本部)に住み、ジョンは、やがて屈指の富豪となり、ジョンの養女となったはルーシーは、並ぶ者の無い美しい少女に成長します。婚約者のいるルーシーに対して、モルモン教団が教団の二人の信者との結婚を強要し、意に沿わぬ結婚を強いられたルーシーは悲観のあまりに死に至ります。そして、元婚約者の復讐として起こった事件を、頭脳明晰なシャーロック・ホームズが解決するというものです。

この作品はモルモン教の主流派である末日聖徒イエス・キリスト教会が一夫多妻制を放棄した1890年よりも前に書かれていることから、モルモン教団の重婚問題を扱った作品でもあります。この作品のシャーロック・ホームズは、犯人がルーシーの元婚約者であったことにおいて、重婚者側に味方していることになり、間接的ながら、重婚を擁護していることにもなります。すなわち、H.H.ホームズとシャーロック・ホームズには、重婚擁護派であるという共通点があるとも言えます。
 
秘密結社のイルミナティーが、親イスラム教であり、隠れ重婚を行っていた可能性が高いことを踏まえますと、H.H.ホームズとホームズシリーズの背景には、やはりイルミナティーがあると考えることができるでしょう。
 
ちなみに、Wikipedia(日本語版)によりますと、「『A Study in Scarlet』が初めて日本で紹介されたのは、発表から12年後の1899年(明治32年)に『毎日新聞』で連載された『血染の壁』である。訳者は「無名氏」不明であり、内容を日本に移した翻案だった。作中、ホームズの名前は小室泰六とされ、挿絵では髭を生やした恰幅の良い人物として描かれた。明治時代は翻案が主流で、『新陰陽博士』『モルモン奇譚』『神通力』といったタイトルで紹介された」そうです。これは、一体、何を意味するのでしょうか。
 

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(続く)