時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

葉梨委員長は「政治倫理要綱」に違反している

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。入管法の改正案につき、本日、法務委員会及び本会議にて採決が行われるというおよそ常軌を逸したような問題が、浮上いたしましたので、この問題について扱います。
 
報道によりますと、法務員会の委員長権限で、本日、採決が行われるそうなのですが、『国会法』には、委員会の委員長には、採決日を決める権限が無いことを指摘することができます。
 
すなわち、『国会法』の定める委員長の権限は、「第四十八条 委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持する」、「第五十条 委員会の議事は、出席委員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる」、「前項の法律案については、委員長をもつて提出者とする」のみであり、採決日の決定は委員長の権限ではないのです。
 
では、採決日はいつになるのか、と言いますと、「国民主権」の具現的制度としての代議員制度のもと、常識的には、審議が尽くされたと大多数の委員(代議員)が認識した時点となると考えられます。そこで、本改正案につきまして、審議が尽くされているのか、といいますと、尽くされるどころか、“審議なし”という状態にあります。
 
『国会法』は、「第五十一条 委員会は、一般的関心及び目的を有する重要な案件について、公聴会を開き、真に利害関係を有する者又は学識経験者等から意見を聴くことができる」と定めております。本改正案に対する国民一般の関心の高さや、実質的に移民を認めることとなるため、国民の大多数が改正に反対している点、将来にわたるその影響の大きさから、公聴会を開くなど、むしろその審議に十分な時間を必要としている法案にもかかわらず、葉梨委員長は、その逆に、“審議なし”の状態で法案を通そうとし、越権行為を行っいました。この越権行為は、“普通選挙によって国民の代表を選び、その代表、すなわち、代議士によって国会において十分に議論していただき、よりよい政策を構築してゆく”という民主主義、議会政治の根幹を壊していることは言うまでもありません。
 
このように考えますと、葉梨委員長は、1985年に定められた以下の「政治倫理綱領」に違反していると考えることができます。
 
「政治倫理綱領は、六月二十五日次のとおり議決された。 政治倫理綱領 政治倫理の確立は、議会政治の根幹である。われわれは、主権者たる国民から国政に関する権能を信託された代表であることを自覚し、政治家の良心と責任感をもつて政治活動を行い、いやしくも国民の信頼にもとることがないよう努めなければならない。ここに、国会の権威と名誉を守り、議会制民主主義の健全な発展に資するため、政治倫理綱領を定めるものである。
 
一、われわれは、国民の信頼に値するより高い倫理的義務に徹し、政治不信を招く公私混淆を断ち、清廉を持し、かりそめにも国民の非難を受けないよう政治腐敗の根絶と政治倫理の向上に努めなければならない。
 
一、われわれは、主権者である国民に責任を負い、その政治活動においては全力をあげかつ不断に任務を果たす義務を有するとともに、われわれの言動のすべてが常に国民の注視の下にあることを銘記しなければならない。
 
一、われわれは、全国民の代表として、全体の利益の実現をめざして行動することを本旨とし、特定の利益の実現を求めて公共の利益をそこなうことがないよう努めなければならない。
 
一、われわれは、政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない。
 
一、われわれは、議員本来の使命と任務の達成のため積極的に活動するとともに、より明るい明日の生活を願う国民のために、その代表としてふさわしい高い識見を養わなければならない。
 
 『国会法』には、「議員は、各議院の議決により定める政治倫理綱領及びこれにのつとり各議院の議決により定める行為規範を遵守しなければならない」とありますので、葉梨委員の『国会法』違反は明らかです。また、本会議の議決を本日とした山下議長も同じく『国会法』に違反しているということになります。「政治倫理綱領」を遵守し、民主主義を護る意思のある委員は、採決日の恣意的決定という明白なる違反行為が行われた以上、これを理由に、再度、葉梨委員長や大島衆議院議長の解任を求めるべきではないでしょうか。また、仮に、本法案が、国会を通過した場合、『国会法』に違反して成立した法律は、無効とすべきではないでしょうか。

 
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