時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

偽ドイツ軍大尉は文明の破壊者

 本日も、古代史・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。『小さな独裁者DerHauptmann』のもととなった実話の偽ドイツ軍大尉ヴィリー・ヘロルトWilli Herold1925911 - 19461114日)とイルミナティーとの繋がりは、ヘロルトの軍歴において、「モンテ・カッシーノなどを巡る激戦に参加した」ことによっても推し量ることができます。
 
昨年の2月9日付本ブログで扱いましたように、Wikipedia(日本語版)によりますと、カトリックの一修道会、ベネディクト派は、中世ヨーロッパにおいて、伝道・神学・歴史記録・自然研究・芸術・建築・土木のそれぞれにおいて大きな役割を果たし、その本山であるモンテ・カッシーノ修道院には古代以来、脈々と書きつがれてきた数多くの貴重な写本(キケロセネカなどの書物も含む)や資料、芸術品が残されておりました。すなわち、知性や理性、精神の豊かさを重んじる修道会であり、ギリシャ・ローマの古典が今日におきましても読み継がれ、人間社会の在り方をめぐる思想や議論におきまして大きな影響を与え続けていること、今日でもその芸術作品を人々が鑑賞することができること、そして、人類がより文明的な生活を送れるような土木・建築技術を発展させることができたことも、ベネディクト派のモンテ・カッシーノ修道院に負うところが大きいと言うことができるでしょう。
 
一方、イルミナティーの前身であるイエズス会は、フランシスコ派の影響が強く、フランシスコ派は、「フランチェスコは貧しさを礼賛することにかけては徹底しており、物質的な豊かさのみならず、精神的ないし知的な豊かささえも認めなかった」アッシジのフランチェスコを始祖とする会派です。
 
すなわち、ベネディクト派は知性・理性派、イエズス会は反知性・反理性派ということになるのです。
 
この点を踏まえますと、モンテ・カッシーノ修道院ヒトラーが爆撃を行ったことには意味があり、イルミナティー(イエズス会)のメンバーであった可能性が高いヒトラーは、人類の知性や理性、そして精神の豊かさを破壊する目的のために、その象徴的な存在であったモンテ・カッシーノ修道院に攻撃を加えたと推測することができるのです。
 
 ヒトラーは、その爆撃に参加する兵士を選ぶにあたり、人類の非文明化・動物化・家畜化を良しとするようなメンタリティーの人々を敢えて選抜したはずであり、ハロルトもその一人であったと考えることができるのです。

 
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(続く)