時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

『竹取物語』に見る古代の国際経済問題

今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。昨日は、『竹取物語』と新年号の「令和」との関係が、貨幣経済システムの維持問題と繋がっている点を指摘いたしましたが、他にも『竹取物語』から見えてくる問題があります。
 
竹取物語』の特徴は、日本最古の文学作品でありながら、すぐれて国際性を持っていることです。かぐや姫は、求婚に応じる条件として、5貴公子たちに難題を出すのですが、その難題のほとんどすべては、海外や辺境の地にあるものばかりです。
 
一つは天竺(インド亜大陸)にあるというお釈迦様の使った「仏の御石の鉢」、一つは唐(中国大陸)にあるという「火鼠の皮衣」、一つは東の海にある蓬莱山(アメリカ大陸?)にある「銀を根とし、金を茎とし、白い玉(真珠)を実とする木の枝」、一つは南海にあるという「龍の頸の玉」、そして、一つは「燕の持たる小安の貝」です(燕は遼東半島から中国大陸北東部にかけてあった古代の燕国のことである可能性もある)。
 
世界地理についての知識の乏しかった奈良・平安時代の日本にありましては、これらの目的地を以って“全世界”と言えます。このことから、かぐや姫の出した5つの難題のすべてに答えるためには、5貴公子たちは、全世界を網羅するような世界貿易ネットワークを構築しなければならなかった、と言うことになるのでしょう。
 
従いまして、5貴公子のいずれも、これらの難題に答えることができなかったこと、すなわち、世界貿易システムを造ることができなかったことが、あるいは、かぐや姫が月の世界に帰り、富士山が爆発することとなった原因であったと考えることができます。『竹取物語』の結末は、世界経済ネットワークの構築の失敗を示唆しているのです。
 
このことは、逆に、しっかりとした世界貿易システムを構築することこそが、世界経済、そして世界の永続性に繋がることをも示唆していると言えるかもしれません。『竹取物語』の時代では、金・銀基軸通貨とした国際決済システムによる世界貿易ネットワークこそ、かぐや姫が考えていた世界経済システムであったのかもしれないのです。金の産出国であった、すなわち、金銀塊を貯蔵している所謂“中央銀行の地下倉庫”を持つ日本国は、このような世界経済システムにおきましては、有利な立場となったことでしょう。
 

このように考えますと、かぐや姫かぐや姫のモデルとなった人物)は、案外、経済学者であったのかもしれないのです。


 

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(続く)