時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

「二酸化炭素排出量ゼロ」というスローガンは日本産業・経済の破綻を招く?

 報道によりますと、2050年までの「二酸化炭素排出量ゼロ」というスローガンの目的達成のために、政府は、すべての家庭用機器(自動車・冷暖房機器・コンロ・お風呂など)を電化製品とすることを義務付け、電化製品以外の製品の製造・販売を禁止する意向であると伝わっております。

 

 仮に、この政府の意向通りの措置が実際に採られますと、否、採られるのではないか、という憶測が拡がりますと、メーカー各社は、電化製品以外の製品の開発・製造・販売を疎かとし、電化製品の開発のみに力を注ぐこととなるでしょう(もっとも、ガス会社などは、ガスを水素に代替させる製品の開発を急いでいるようですが、ハードルはかなり高いのでは?)。

 

 ここで、気づかねばならない点は、電化製品には安定的に供給される廉価な電力が必要とされる、という点です。すなわち、オール電化としてしまった場合、電力の供給の不安定化と高い電力料金は、メーカー各社に倒産の危機を齎す可能性があるのです。

 

 火力発電所原子力発電所が稼働しているがゆえに、現在、電力は、かろうじて安定的、かつ、廉価に供給されているようです。このような現状においては、オール電化は可能であるように見え、このスローガン通りに進んでも大丈夫なように思えてしまいますが、2050年までの「二酸化炭素排出量ゼロ」というスローガンは、‘廉価な電力の安定的供給’というオール電化の前提条件を崩すスローガンでもある点に気づくべきなのです。

 

 「二酸化炭素排出量ゼロ」は、現在稼働中の化石燃料による火力発電所の閉鎖を意味します。太陽光発電風力発電などによってカバーさせると政府は、説明しているようですが、天候や蓄電コストの影響を受けるため、2050年までに、これまでどおりに、電力を廉価で安定的に供給することができなくなる可能性の方がよほど高いのです。原子力発電所が増設されるのであるのならば、この問題は解決するのですが、この点に関しましては、野党をはじめとして、いわゆる‘左翼’勢力が、むしろ原子力発電所を廃止させようと盛んに活動を行っていることは周知のとおりであり、いつ何時、原子力発電所が閉鎖されるかわからず、また、増設されえない可能性も視野に入れなければいけないということになるでしょう。

 

 この結果、2050年までにメーカー各社の努力によって、すぐれた電化製品は開発できても、その不安定で高い電力料金によって製品を購入する人が、皆無となってしまうかもしれないのです。

 

 すなわち、2050年までの「二酸化炭素排出量ゼロ」というスローガンは、無責任で、悪意のある極めて危険なスローガンであり、文字通りに実行いたしますと、日本の産業・経済を破綻させてしまうことが予測されるのです。