時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

脱原発論―原発コストは高いへの疑問

 脱原発論を張る人々は、その根拠として、原子力発電による発電コストは見かけよりも高いと主張しているようです。つまり、脱原発でも、電力料金は値上がりにはならないと。しかしながら、この説には、疑問があるのです。

 原子力発電を積極的に進めた背景には、70年代の石油ショックがあったと指摘されています。資源に乏しい我が国では、石油への依存率が高いと、石油危機の発生が経済を直撃するからです。原子力の導入には、リスク分散の意味も意味もあったのですが、脱原子力となりますと、再び、70年代以前の状況に舞い戻ることにもなります。

 当然に、資源価格に経済が振り回されることになり、電力供給は不安定化するとともに、価格上昇に見舞われるリスクを負います。再生エネルギーでは今日明日に電力供給増加は見込めず、ある試算によりますと、原子力発電を火力に代替すると3兆円ほどコストがかかるそうです(浜岡原発を停止させた中部電力は年間2500億円の損失が出る・・・)。脱原発を宣言する国がさらに増えますと、資源価格も上昇し、3兆円を越える可能性さえあります。

 また、原発のコスト高を主張している人々は、そのコストに、事故による賠償を予め含めてしまっています。今回の事故による賠償額が仮に10兆円としましても、火力代替によるコストが3兆円ですので、数年経過すれば、火力のコストの方が上回ります。安全性を高め、以後、一回たりとも事故を起こさなければ、事故のコストは、10兆円でおさめることができるのです。

 さらに、アメリカでは、原子力への新規参入事業者がほとんどいないことが、コスト高の根拠とされますが、アメリカの場合、天然資源に恵まれています。資源のない国ほど、原子力への依存が高いことを考えますと、石油、石炭、ガスを大量に輸入よりも、原子力の方が低価格であるとも考えたほうが妥当です。

 原子力が実際に高コストであるならば、中国や韓国をはじめ、新興国原子力の導入に積極的な理由が見当たりません。中国などは、240基どころか、将来的には400基ほどに増やす計画もあるそうです。

 自然エネルギーはまだ研究・開発の段階にあるのですから、脱原発を急ぐことは、我が国の経済を不安定化し、負担を重くすることに他なりません。やはり、原子力のコストが高いという説も、疑ってみるべきではないかと思うのです。

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