時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

憲法第9条は主権平等の原則に反する

 憲法第9条こそ、世界に誇るべき日本国の宝である、とする意見を良く耳にします。しかしながら、見方を変えますと、賞賛一辺倒とばかりは言えないのではないかと思うのです。何故ならば、憲法第9条は、主権平等が原則である国民国家体系にあって、日本国のみに死活的な政策領域に制限を課しているからです。

 国民国家体系の長所は、従属関係を意味する垂直構造ではなく、主権平等の原則に基づく並列構造にあると言われてきました。このシステムにあっては、たとえ敗戦国となっても、主権回復の後には、平等な立場に復帰することができます。もし、この立場に戻れないとすると、それは、自国のみが下位国家となることを意味することになるのです。ドイツやイタリアはもとより、イラク戦争で敗戦したイラクでさえ、主権は回復されました。

 さて、日本国の場合を考えますと、もちろん、自ら第9条を改正し、国際社会において諸国と対等な地位に復帰することができます。しかしながら、むしろ、日本国は、第9条に甘え、あるいは、隠れ蓑に使い、あえて国際社会で果たすべき責任を回避しているように思えるのです。この意見は、極論なのでしょうか?