時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

政府は経済成長のエンジンにはなれない

 政界では、財政をめぐって、成長重視派と財政再建派とが鎬を削っているようです。この対立は、本当のところは、経済学でいうところの新自由主義派vs.ケインズ派ではないか、と思うのです。

 この対立から見ますと、財政再建派を、”財政再建を政策目的として取り組む人々”として理解することはできなくなります。何故ならば、ケインジアンの考えでは、一時的に財政赤字を拡大させても、政府が、財政拡大による積極的な経済刺激策をとることを是認しているからです。しかしながら、この政策は、失敗の事例が各地で見られ、日本国もまた、バブル崩壊後の財政拡大政策は、今日の巨大な財政赤字の原因ともなりました。つまり、この路線は、歴史的には失敗が証明されているのです。しかも、一通りのインフラ整備を終えた現在にあっては、政府は、社会保障などに予算の多くを割いており、経済成長に繋がるような政策を実施する幅は狭まっています。

 政府が経済成長のエンジンとなるというのは、消えたはずのケインジアンの亡霊であって、財政赤字をつくった政策を再び蘇らせることには、慎重であらねばならないと思うのです。