時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

底なし沼に引きずりこまれそうな対朝交渉

 新聞やインターネットの報道によりますと、高村外務大臣は、北朝鮮に対し、数人の拉致被害者が帰国するような場合も拉致問題の進展と認める、とする内容の発言を行い、対朝支援の可能性を示唆したと言います。しかしながら、これでは、まるで人質事件における犯人との交渉のようであり、展開によっては、北朝鮮ペースの底なし沼に引きずり込まれる可能性もあります。

 拉致被害者の数は、被害認定されている方々の数よりも多く、実際には100名以上にのぼるのではないか、と言われています。もし、この数が事実に近いとすれば、北朝鮮は、人質事件の犯人が身代金の額によって解放する人質の数を決めるように、数名ずつ帰国させることにより、日本国に対して法外な支援の要求をおこなうかもしれません。それのみならず、拉致被害者北朝鮮の手中にあるのですから、北朝鮮が、”絶対に帰国させない”と判断した被害者の方々は、永遠に祖国の土を踏めないことになってしまいます。

 拉致被害者全員の帰国は、北朝鮮に対するモニタリングを要するものであり、安易に北朝鮮の言い分を鵜呑みにしますと、犯罪国家である北朝鮮を利することになりましょう。体制崩壊政策へと舵を切る方が、全員帰国への道としては近いと思うのですが、対北融和政策に傾く傾向にあることは、まことに、残念なことです。