時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

テロ対策としての人道支援の限界

 新テロ特措法をめぐっては、インド洋での給油活動ではなく、アフガニスタンでの人道支援を行うことによって、テロリストを生む根本的な要因こそ根絶すべきではないか、との意見がよく聞かれます。しかしながら、相手がイスラム原理主義タリバンであることを考えますと、この政策にも限界があるように思うのです。

 この限界は、タリバンの支配地域において、特に顕著となります。第1の限界は、近代的な教育支援が拒否される可能性があることです。何故ならば、イスラム神学校による教育こそが、宗教原理主義集団としての永続性を支えているため、タリバンが、自らの教育権を手放すとは考えられないからです。第2に、医療支援としてタリバン側に医薬品を供与したとしても、女性や子どもには行き渡らないかもしれません。タリバンの女性や子どもに対する冷酷な態度は、よく知られるところです。第3に、農業技術の支援に関しても、タリバンの収入源となり、また、農民にとっても高収入が得られるけし栽培が奨励されている限り、穀物生産への転換は簡単ではありません。そうして、第4に、テロリストが跋扈するアフガニスタンの地に、無防備な政府、あるいは、民間の支援団体が活動することは、あまりに危険であることです。人質事件の発生も懸念されますし、むしろ、テロとの闘いに苦しむアフガニスタン政府のみならず、命がけで闘っている多国籍軍にとって、迷惑な存在になるかもしれません。

 政策とは、相手を見極めた上で選びませんと、むしろ、事態の悪化に手を貸したり、テロの助長に与することになりかねません。人道支援の効果が、タリバン支配地域には及ばないことを、充分に考慮すべきではないか、と思うのです。