時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国連中心の恒久法は台湾有事に自らの手を縛る

 自衛隊の海外派遣について、現在、自民党および民主党とも、基本的には前向きの姿勢を見せているといいます。大連立の協議にあっても、自民党が、民主党の国連中心主義に妥協を示したとも伝わりますが、仮に、国連決議を条件とした海外派遣を基本原則としますと、将来的に、自らの政策手段の幅を狭めることになるのではないか、と思うのです。

 特に懸念される状況は、台湾有事です。台湾は、地政学的には東シナ海に位置しており、貿易立国である日本国の国益とも密接に関係しています。仮に、中国が、「反国家分裂法」に基づいて、台湾に対して武力行使を行った場合、中国は国連の常任理事国ですので、絶対に、国連決議は成立しません。つまり、国連中心主義の恒久法を制定した時点で、台湾有事に際しての日本国の政策は、たとえ米軍が出動しても、自衛隊は派遣せず、ということで決まってしまうのです。このことは、アジアにおいて、中国が武力行使に訴えやすい環境が整えられてしまうことを意味します。

 中国の武力行使に対して、国連決議がなくとも自衛隊が派遣される可能性を残す方が、はるかに中国の覇権主義を抑止する力となるのではないか、と思うのです。アジアの平和と安定のためにも。