時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

薬害肝炎の解決にはバランスを

 薬害肝炎とは、ウィルスの混入した止血用の血液製剤を投与された患者の方々が、C型肝炎に感染してしまったという薬害事件です。この事件については、舛添厚生大臣が、被害者の方々に1000億円規模の国家補償を示すとともに、大阪高裁でも和解勧告が出されることになりました。

 被害者の方々は、本人の意思とは関係なく肝炎を患うことになったのですから、その憤りや不満は充分に理解できます。しかしながら、1000億という莫大な国家補償(国民負担)が妥当であるかにはついては、さらなる検討が必要なように思うのです。この事例に沿うとしますと、国家が承認した製品に欠陥があった場合、国家は、法的な責任に加えて、常に補償や賠償の責任を負うことになります。国家は国民に対して公平であらねばなりませんので、医薬品に限らず、あらゆる製品や製造過程による被害が補償の対象となりましょう。水俣病の被害者の方々に対しては、一人当たり150万円の一時金の支払いで済ませるとする解決案が出される一方で、C型肝炎の患者の方々には生涯にわたって医療補助金が支払われるということになりますと、何かバランスを欠いているようにも思えるのです。

 将来的な方向性を考えますと、企業活動による被害については、基本的には企業側の責任を重くし、各事業者団体は、賠償事件に備えた保険制度を自主的に運営するということも一案です(預金保険機構のようなもの・・・)。また、今回のC型肝炎については、インターフェロンを保険適用としたり、加害企業に対して、治療用のインターフェロンの無料提供を求めるといった方法も考えられます(もし、インターフェロンを製造していたら)。あるいは、海外の製品の方が価格が低い場合には、輸入を認めることが国の負担軽減に繋がるかもしれません。工夫次第では、当事者全てが納得する解決方法を見つけることができるかもしれないのです。