時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

恒久法と国際平和協力法

 自衛隊の海外派遣については、民主党を中心に恒久法制定に向けての動きが続いているようです。また、自民・民主両党の党首会談による大連立協議の際には、国連決議を条件とする内容で合意に達したとの情報もありました。真偽のほどは分かりませんが、あまりに曖昧な点が多いにもかかわらず、既成事実化路線を歩みそうで大変心配です。

 第1に、恒久法は、国連憲章第7章に基づく国連の軍事行動を対象としています。その一方で、武器の使用などについては制限を設ける旨の発言もなされており、これでは、国際平和協力法との違いが明確ではありません。国連の国際平和維持活動(PKO)は、国連憲章第5章と第6章に基づくとされていますが、第7章に基づく軍事行動である場合には、武力行使は不可避となりましょう。

 第2に、国連決議を条件とするとのことですが、第43条のいわゆる”国連軍”の結成が極めて困難な状況にあっては、むしろ、第7章のもとで承認されたアフガニスタン国際治安支援部隊ISAF)のパターンが想定されます。これは有志連合の追認として理解されていますから、民主党の目指す、いわば国連軍頼りの方針にはそぐわないことになります。

 第3に、国連が闘う相手が不明確なことです。現在、国際社会における大多数の国が国連加盟国となった現状では、内部の敵と戦うか、テロリストといった非政府武装組織と闘うかしかありません。内部の敵の場合には、安保理決議が成立しない可能性が極めて高くなります。

 以上の他にも検討すべき課題は多々あり、恒久法の制定が、本当に必要なのかは疑わしい限りです。原則としては、憲法改正を議論すべきですし、自らの主権にかかわる政策権限を狭めるような法律を制定することが、変化の激しい国際社会にあって望ましいことなのか、再検討してみる必要があるように思うのです。