時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

物価の上昇は隠れた増税

 インフレ=物価の上昇は、”隠れた増税”と言われています。今般、消費税率の引き上げをめぐっては、引き上げ不可避論などが展開されていますが、原油価格や穀物価格の急激な上昇を原因として、現在、物価が上昇傾向にあることを考えますと、税率を上げなくても、実質的には増税されていることになるのではないか、と思うのです。

 特に、消費税は景気の変動を受けにくいという指摘もあるのですが、消費税とは、物の価格と消費量に依存する課税方法です。このため、物価が上昇しますと、その分、政府の歳入も増えることになるのです。ただし、税収増加の見込みはそう楽観できるわけではありません。何故ならば、物価上昇しますと消費は冷え込みますし、加えて、政府が消費税を上げたますと、消費量の方が減少する可能性が高くなるからです。消費量の現象は、即、企業の収益の悪化を意味しますので、失業者の増加も心配しなくてはならなくなります。この結果、失業対策のためのさらなる予算が必要となりますと、増税と失業のスパイラルが発生するかもしれません。

 消費税率の引き上げは、市場の物価指数ともにらめっこをして決めるべきでしょうし、景気停滞の引き金をひくことになれば、それこそ、政府の失敗となりましょう。国民生活と雇用を守るためにも、政府には、慎重な判断をお願いしたいと思うのです。