時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

中国の砲艦外交は日中友好を破壊する

 近年、中国の急激な経済発展を背景に、中国との友好関係の強化がしきりに謳われるようになりました。しかしながら、ここに至って、東シナ海ガス田での日本国の試掘作業に対して、中国政府が、艦隊の派遣を示唆したという報道がありました。もしこの事が事実であれば、日中関係は、完全に破壊されたに等しい状況となります。

 そもそも、中国側による艦隊の派遣は、1978年に締結された両国間の基本条約である日中平和友好条約に反することになります。この条約の第一条二項には、「・・・すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する」という文章があるからです。尖閣諸島ならびに東シナ海の問題に際して、中国が19世紀の”砲艦外交”に逆戻りしているとしますと、日本国とて、”アジアの時代”の掛声に安心してはいられません。

 友好、友好と言葉では言い繕いながら、相手に対して武器を構えて威嚇していたとしたら、これを、本当の友好とは言う人はいないでしょう。むしろ、友好は消えうせて、両者の関係は、脅す側と脅される側に変質することになるのです。日本国政府は、この脅しに対して毅然たる態度を見せませんと、中国の自己中心的なルールにアジア、そうして、国際社会を明け渡すことになるかもしれません。まことに、心配な限りです。