時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

守屋夫妻に見る大和撫子絶滅の危機

 日本国では、夫人は公には現れず、家庭にあって内助の功に努めることが美徳とされてきました。この風習は、女性を家に閉じ込めるとして、内外から批判されたりもするのですが、元防衛事務次官が、夫婦揃って逮捕されるという前代未聞の事件を目の当たりにしますと、旧来の美徳の方が、公私混同を避けるという意味においては、よほど”まし”な方法のようにも思えてしまうのです。

 もとより、公人の夫人とは、私的な立場であって、たとえ夫が公権力を担う立場にあったとしても、何らの公的な影響力、あるいは、決定力を持ってはならないはずです。むしろ、夫人が公権力に介入するば、それは、れっきとした違法行為とさえ言えましょう。ところが、今回の事件は、夫人の方がリーダーシップを握っていたと伝えられており、夫婦という私的なつながりが重大な汚職事件を招く結果となりました。現代という時代の方が、悪質な公私混同がはびこってしまうとは、誰が想像できたでしょうか。

 一昔前の大和撫子であるならば、公人の夫に汚職の嫌疑がかかるようなことがあれば、国と夫の名誉を守り、悪しきに手を染めぬように、迷わずに、夫の軽率な行為を諌めたことでしょう。しかしながら、どうやら大和撫子は絶滅の危機にあるようで、諌めるどころが自分も一緒になって私益を貪ったようなのです。女性の地位向上は声高に言われてはいますが、自らの実力ではなく、夫の地位を利用したり、悪事を唆したのでは、良き婦人は育たないのではないでしょうか。