時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

排出権取引や環境税は考えもの

 近年、環境政策の手法として、排出権取引環境税といった方法が、市場のメカニズムを取り入れた新たな手法として脚光を浴びてきました。しかしながら、よくよく考えてみますと、地球温暖化ガスの排出量を減らすという目的には、実は、旧来型のストレートな規制の方が効果的なのではないかと思うのです。

 温暖化ガス削減という目的と市場活動とを絡めた方法である排出権取引環境税は、それ故に、経済活動に直接影響を与えます。排出権取引の方は、企業に排出権購入のコストが生じ、これに、環境技術の開発や導入コストが加わりますと、二重の負担になります。環境税の方は、意図的にエネルギー価格を上げて、エネルギー消費の総量を減らそうとする方法ですが、こちら方法でも、コスト高によって企業の事業縮小を招くかもしれません。さらに、両者が同時に実施されるとしますと、企業は、三重の負担に苦しむことになりましょう。

 以上の点を考慮しますと、環境政策と経済成長との二律背反を最小限にとどめ、企業負担を極力軽減するためには、温暖化ガスの排出量に数値を設けたり、植林を義務付ける方が適切であるかもしれません。何故ならば、この方法ですと、企業負担は、環境技術の開発と導入、あるいは、植林費用という一重の負担ですむからです。しかも、この方法ですと、削減効果はストレートでさえあります。新しい手法であるからといって、必ずしも優れた手法であるとは限りませんので、ポスト京都議定書では、大いに議論していただきたいと思うのです。