時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

温暖化ガスを削減せよ、たとえ産業が滅びるとも?

 ”正義をなさしめよ、たとえ世界が滅びるとも”という有名なフレーズがあります。最近、ガソリンの暫定税率の問題について、地球環境保護を盾に廃止反対が主張されているのを耳にし、つい、このフレーズが頭に浮かんでしまいました。

 反対の主張は、ガソリンの消費量の増加に比例して、温暖化ガスが排出量が増えるので、ガソリンの小売価格は高いほうがよい、つまり、ガソリンは使わない方がよい、という論理となります(環境税の発想と同じ)。この論理に従いますと、活発な経済活動は環境にマイナス影響を与えますので、産業は衰退する方がよい、という結論に容易に到達しそうな気配がします。環境と産業とを天秤にかけた場合、政府は、どうやら環境のほうを優先しそうなのです。我が国は、戦後の焼け野原から、産業の復興を通して国際社会における地位を築き、国民の生活レベルも向上させてきました。しかしながら、環境問題が重くのしかかって、こうした努力も水泡に帰してしまいそうなのです。環境のためには貧しさに耐えるべきであるという意見もあるのですが、不況に至り失業問題が発生しますと、そのような悠長なことは言っていられなくなるかもしれません。

 こうした問題には、政府と国民が知恵を絞って、産業と環境が両立するような方法を真剣に考えるべきであって、産業活動を抑制すればよい、とする発想は、あまりに安易なように思うのです。