新型コロナウイルスは時代の転換点になるのか:消滅業種の可能性
世界的に感染が拡大している新型コロナウイルスにつきまして、政府は来週中にも対応策・支援策をまとめるとのことです。
政府は、新型コロナウイルスの発生によって収益減となった企業や収入減となった個人に対しまして、一時金の支給や無利子の緊急融資など、従来の一般的な被災者支援策と同様の支援策を考えているようですが、これまでに明らかとなってきた新型コロナウイルスの特性、特に人から人への感染力の高さ、致死率の高さ、そして保菌者の移動性は、こうした従来型の対策は無意味であり(いわゆる‘焼け石に水’であり、緊急融資については、融資先の倒産リスクによって財政赤字が膨らむため、むしろ危険)、従来の災害対策とは異なる発想、すなわち、人々の意識の変化、生命の安全に対する意識の変化による社会構造全体の大きな変化と転換に如何に対応してゆくのか、といった点を視野に入れた政策の策定を必要とされている可能性を示唆しております。
そもそもウィルスによる感染病のパンデミックな拡大が世界経済や社会に与える影響は、21世紀に入った頃から、その危険性が主に専門家によって指摘されておりましたが、それが現実となって顕れたのが、今般の新型コロナウイルスであると言うことができます。中国では、新たに別のウィルス患者が発生していると報じられておりますように、仮に、新型コロナウイルスが終息しても、次から次へと別のウィルスが出現する可能性は高いのです。すなわち、国民が感染病の危機と常に直面している状態の‘感染病社会’が出現してくると考えることができるのです。
感染病に罹らないためには、まずもって、人と人とがある一定以上の距離を保たねばならない、もしくは、人と人の間に隔離材を置かねばならないことになります。この点から、‘感染病社会’では、まずもって、消滅業種が発生してくるはずです。すなわち、接客業、飲食店業、観光業(特に団体旅行業)、興行業(イベント業、観客が集まるプロ・スポーツの競技場、ライブ・ハウスなど)などのサービス業の多くが消滅業種となる可能性が高いと言うことができます。航空会社や鉄道などにつきましても、テレワークやテレビ会議が主流となってまいりますと、座席と座席の間に距離を置いたり、隔離壁を設ける、十分な換気装置を設けるなどといった何等かの対策を採らなければ、消滅産業に入ってしまうかもしれません。
このように考えますと、新型コロナウイルスという特定の災害の被災地(減益の企業・収入減の個人)への支援という一時的・短期的な対応ではなく、社会全体の意識や構造の変化を支える長期的・恒常的な政策が必要とされてくることになります。こうした構造改革におきまして、消滅業種に就労している人々の行く先が問題であり、支援策は、‘感染病社会’の成立によって新たにつくられる、もしくは、成長してくる産業や業種に移行させることが考えられます(生活必需品の国産化への動きにも対応)。すなわち、消滅産業がある一方で、新たな産業や業種が興る可能性や特定の産業が成長する可能性もあり、政府は、むしろこうした社会全体の構造の転換が、スムーズに行われるような政策を推し進める必要があると言えましょう。