時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

酷い年ながらも見えた課題

 今年一年を振り返りますと、参議院選挙を機に衆参のねじれ現象が起きるとともに、阿倍政権から福田政権への混乱に満ちた交代劇も発生しました。この政治混乱の余波は現在まで続いており、平成19年は酷い年であった、という評価を後の世では受けそうです。

 まことに酷い年でありながらも、この一連の混乱の中にも、後世への貴重な教訓が残りましたし、また、戦後長らく積み残してきた様々な課題が浮かび上がることになりました。例えば、国内にあっては、衆参両院の優越関係のねじれ、過大な参議院の役割、民意と首相選出の乖離、二大政党制の欠点、マニフェスト方式の限界、官僚制の腐敗、行財政改革への抵抗、ばらまき政治の復活・・・などを挙げることができます。また、対外関係にあっては、日米同盟の動揺、親中政策への危うい転換、経済的地位の低下・・・といった不安定要因も強く意識されることになりました。これらの課題は、21世紀の日本国の姿にかかわるものであり、基本的な制度改革や政策の方向づけを伴うものとなりましょう。

 こうした課題を先送りしますと、日本国の政治は、機能不全から脱することはできませんし、半永久的に不安的な状況が続いてしまいます。福田政権にあっては、改革の後退が指摘されており、野党側の民主党もまた、国民が本当に望んでいるのかわからないような政策を次々と打ち出していますが、最優先に取り組むべき問題とは、やはり、本年において明らかとなった課題なのではないか、と思うのです。