時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

サミット中印加盟の吉凶

 今年7月の洞爺湖サミットを控え、英仏首脳が、サミットのメンバーを中国とインドを含めた新興五カ国を加えた十三カ国に拡大する案を、共同声明として発表したと言います(本日付日経朝刊)。アジア唯一のサミット参加国である日本国の立場からしますと、中印の参加は本来望ましくはないのですが、このことを理由に拡大に反対しても、他のメンバーを納得させることは難しそうです。そこで、まずは、拡大サミットが、世界経済にとてプラスに働くかどうかを検討してみることが、肝心なようです。

 プラスに働くシナリオとは、経済の現実への対応です。近年、新興国の急激な経済が顕著となり、もはや、先進国のみの政策協調では限界があります。また、経済情勢の不安定化の震源地が、新興国にある場合もあり、問題要因を抱える新興国を取り込みことができれば、世界経済悪化の芽を摘みとともに安定化に役立つかもしれません。

 その一方で、マイナスに働くシナリオもあります。それは、新たにメンバーとなった諸国が、政策協調よりも国益を選ぶことです。メンバーの数が増加すると、一般論としては合意の成立は難しくなる傾向にあるのですが、これに加えて、新興国の行動パターンは、成長を優先させるために、自国中心に傾きがちです。しかも、中国の場合には、政治的な共産主義が健在であり、また、先進国の顔と後進国の顔を使い分けてきてもいます。サミットの議題の重心が、地球温暖化対策に移りつつある中、新興国が、自らの政策手段を縛る枠組みに参加することを望むのか不透明ですし、また、対立点の増加は、サミットの分裂要因となるかもしれません。

 さて、この提案、世界経済にとって吉とでるのでしょうか、あるいは、凶とでるのでしょうか。慎重な見極めが必要な課題であることだけは、確かなようです。