時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国籍と外国人差別の自己矛盾

 現在、自民党の「国籍問題に関するプロジェクトチーム」の取りまとめにより、永住外国人の国籍取得を許可制から届け出制へと変更する法案が、議員立法で提出される方向にあるそうです。(本日付産経新聞)。届け出制への変更は、国民の枠組みに関する政府の重大な権限の放棄となりますので、望ましくないことなのですが、もうひとつ、外国人差別を唱える人々には解き難い自己矛盾があると思うのです。

 もし、国家間には優劣がなく、まったく平等であるならば、どの国籍であっても価値は等しいはずです。ですから、大多数の人々は、自分が属する民族の国、あるいは、自らが生まれた国の国民であることを自らの運命として受け入れ、その国の国民として生涯を送ることになります。ところが、中には、その自然が定めた運命に抗して、他の国で生きることを決意し、他国の国民になることを選択する人々もいます。この選択は、決して平等の原則から出たものではなく、母国よりも豊かな国、あるいは、チャンスのある国を恣意的に選択した結果なのです。ある意味において、母国を”差別”した結果に他ならないのです。このことは、受け入れ国に対しては平等を求めながら、自らは、内心において自国を差別をしているという、解き難い自己矛盾を抱えていることになります。

 果たして、この自己矛盾にどれだけの人々が、気が付いているのでしょうか。永住外国人の人々の中には、拉致事件等に関係したり、反日活動を行ってきた人々がいることも考え合わせますと、届け出制への移行は、行き過ぎた平等主義のように思うのです。