時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

かわいらしさvs.芸術性?

 奈良では、平城京遷都1300年を記念したイベントを開催する予定なそうで、先日、イメージ・キャラクターのデザインが公表されました。ところが、このイメージ・キャラクター、かわいらしさや親しみやすさに欠けており、かつ、仏様に鹿の角をはやすというデザインであったために、県民の評判が芳しくないと報じられいます。

 さて、この不評の原因はどこにあるかと言いますと、イメージ・キャラクターに求められているものと、作者の意図が大きく食い違ったからではないか、と思うのです。キャラクターの選考過程に不透明性があったことも指摘されていますが、そもそも、芸大の先生に依頼したことが、ミスマッチの原因とも言えるのです。芸術家とは、芸術性の高い作品を造ることにこそ自らのプロ意識を見出すものであり、このため、奈良の寺社仏閣が担ってきた伝統宗教の尊重や一般受けは二の次となります。その一方で、マスコット・キャラクターに求められているものは、奈良のイメージ・アップに繋がり、誰からも好意を持たれるようなかわいらしさや親しみやすさだったのです。

 県の主催者側の見解では、再公募はしない予定とのことですが、奈良県は、彦根ひこにゃんのような全国的なキャラクターが育つチャンスを逸するようにも思えます。それとも、奈良県は、これは芸術作品と割り切って、我が道を行くのでしょうか。