時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

死刑廃止が目的の裁判員法改正案?

 裁判員制度の施行に先立って、「死刑廃止を推進する議員連盟」は、死刑判決を言い渡す条件を裁判官と裁判員両者の全会一致とする法律改正案を提出する予定と言います(本日付日経新聞朝刊)。この法案の本当の目的は、死刑の廃止にあると思われるのです。

 そもそも、裁判員制度については、これまでの裁判の判決が一般常識から離れており、加害者に有利な判決が多く見られたことが、導入理由として挙げられてきたました。当初は、裁判員制度によって、死刑判決は増加すると予測されていたのです。しかしながら、上記のように法律が改正されますと、死刑判決が下される可能性は著しく低下することになります。

 そうして、さらに問題となるのが、裁判員の候補者に対する裁判官による事前質問と、被告側と原告側の双方が持つ忌避権です。死刑廃止論者を、極端な思想の持ち主として予め排除できるのか、ということが極めて大きな問題となるのです。仮に、質問内容や忌避理由にこれを含めないとしますと、死刑判決の数は減りますし、反対に、含めるとすると増加するのです(もちろん、原告側は、控訴できますが・・・)。

 裁判員制度は、そもそも憲法違反と考えられるのですが(第80条)、制度の運用によっては、事実上の一審における死刑廃止となってしまいます。死刑廃止を望むならば、やはり、横道からではなく、正々堂々と刑法の改正を訴えるべきと言えましょう。世論の多数は、死刑制度の維持を支持していますので、公開の議論を避けてはならないと思うのです。