時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日本版政府系ファンドは既に存在している?

 中東諸国や中国の政府系ファンドの投資拡大を受けて、日本国でも、政府系ファンドの設立が検討されています。しかしながら、よく考えてみますと、もう既に、日本にも政府系ファンドが存在しているようなのです。

 それは、公的年金の積立分を運用する”年金積立金管理運用独立政府法人”という機構です。この名称は日本語の正式名称ですが、英語では、Government Pension Investment Fundと:GPIF表記され、直訳しますと”政府年金投資ファンド”となりますので、この方が機構の性格がより明らかになります。つまり、この機構は、国民から積み立てられた年金のうち、給付分を引いた資金を分散投資することによって、運用益を得ているのです。もっとも、最近の新聞報道によりますと、3兆円程の運用損を出していますので、必ずしも運用益があがるわけではなく、むしろ、政府系特有の公務員による投資の失敗という問題を抱えているようです。

 年金運用機構を政府系ファンドと捉えますと、日本国のみならず、積立方式の公的年金制度を持つ国のほとんどが政府系ファンドを事実上保有していることになります。しかしながら、日本国の運用損に見られますように、こうしたファンドが、必ずしも、国民の利益となるとは限りません。少なくとも、大幅な損失を被らないためにはどうすべきか、制度改革を含めて議論すべきではないか、と思うのです。