時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

人権委員会は国連が支配する?

 人権擁護法案とパリ原則との関係については、先日、既に本ブログで書きましたが、人権委員会の設立を求める国連の隠れた意図とは、もしかしますと、国連による各国人権委員会の直接支配なのではないか、と思うのです。

 国家を超えて国際機構を造る場合、加盟国の国内行政機関に独立性を持たせ、それを、国際レベルの機関と接続させて、ネットワークをつくるという方法があります。たとえば、EUのECB(欧州中央銀行)は、まさしくこの手法を用いたのであって、ECBの下に、各国政府から独立した中央銀行がネットワークでつながっています(欧州中央銀行制度:ESCB)。つまり、国際機構を最も簡単につくる方法が、制度的に独立した機関を上位の国際機関が直接に従属させることなのです。

 そもそも、EUの場合には、条約によってECBに金融政策の決定権を認めており、この点において、加盟国の権限に抵触することはありません。しかしながら、国連が、人権擁護という領域でこの方法を採るとしますと、国連が、国家の権限を侵害することにもなるのです。パリ原則には、各国の人権委員会が、国連に報告を行うことを義務づけており、ややもすると、国連官僚の決定事項が、ストレートに人権委員会の活動方針に反映されそうです。

 本法案が可決されれば、自由のみならず、自治の原則としての民主主義を危機に陥れることになりそうです。国連支配や国家権限の抵触問題の議論なくして、人権擁護法案の本当の怖さは見えてこないのではないでしょうか。