時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

投機依存シンドロームという金融の病

 ニューヨークの原油先物市場において、本日、過去最高の1バレル110ドルを超えたと報じられています(本日付日経夕刊)。これは、言わずもがな、証券市場への不安から、投資資金が、商品市場に大量に流入しているからです。

 ところで、この状況を放置しますと、やがて、商品市場のバブルは崩壊し、ほんの一部の売り抜けに成功した投資家を除いて、利ざや優先で投機に走った金融機関も大損を出すことになります。つまり、商品市場への投機は、ギャンブルであって、自滅行為なのです。予測されるバブル崩壊を回避するためには、日銀の政策金利を上げる、という選択肢も、本日拝見したブログにおいて指摘されており(トラックバック先を参照)、政府は、何時かは訪れるこのカタストロフィーに事前に対処する必要に迫られているのです。

 私見としては、投機規制や商品市場を隔離するファイアー・ウォールの構築が有効ではないか、と思うのですが、中央銀行の金融政策を用いるとしますと、各国の中央銀行が政策協調を行い、相互の金利差を縮めるという方法も考えられるかもしれません。ただし、この方法ですと、国内や域内の事情と齟齬をきたすという問題があり、例えば、日銀が政策金利を上げますと、長期金利の上昇により財政の悪化が予測されます。また、反対に、FRBやECBが金利を下げますと、インフレが加速したり、商品市場への投機に拍車をかけるかもしれません。

 最も、傷口が小さくてすむ方法とは、実のところ、政府の政策ではなく、投資家の自己抑制という行為なのかもしれません。つまり、商品市場への投機を手控えるのです。破滅に向かうと判っていながらその行為をやめられないとしますと、これは、もう病的というしかないかもしれません。