時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

他国を犠牲にした常任理事国入りは本末転倒

 本日の産経新聞の朝刊に、「胡主席訪日成果の流動性」と題する中国総局の論説が掲載されていました。この記事によりますと、中国政府が日本国政府常任理事国入りを支持するか、否かは流動的であって、それは、台湾問題についての日本側の態度にかかっているいうことのです。しかも、たとえ中国寄りの態度を表明したとしても、それでも、アジアの盟主を狙う中国が常任理事国入りを支持するかは分からないと・・・。

 近年、国連の常任理事国入りが、あたかも日本外交の最優先課題の如く取り上げられ、多額の予算を費やしたにもかかわらず、今のところ、然したる成果をあげることができませんでした。もし、胡主席の訪日に際し、成果を焦るばかりに、チベット弾圧への非難を緩め、台湾の独立を否定するとしますと、これは、アジアの秩序に対する責任の放棄にとどまらず、不道徳な裏切り行為にもなりかねないと思うのです。打算的な取引によって、常任理事国の座を手にしたとしても、国連には制度的な機能不全があり、中国の武力弾圧や膨張主義を止めることはできません。常任理事国という名をとっても、実を捨ててしまったら、何にもならないのです。

 常任理事国入りの夢を追うよりも、現実の問題にこそ目を向け、相手が誰であろうとも、非難すべきを非難しなくては、日本国の沽券にかかわるというものです。あらゆる手段を尽くしてチベットを救うべく努力し、台湾の立場を守ってこそ、日本国は、他国から尊敬される国となり得るのではないでしょうか。それは、常任理事国になるよりも、はるかに尊い行為であると思うのです。