時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

チベット弾圧非難は内政干渉ではない

 チベットで起きた大規模な弾圧に対して、日本国政府は、中国政府に対して非難を表明することは、あたかも内政干渉に当たるとでも言いそうな口ぶりのようです。しかしながら、チベット問題は、中国の国内問題ではなく、れっきとした国際問題であると思うのです。

 その根拠は、中国によるチベット領有には、国際法上の正当な根拠がないからです。1951年にチベット代表団は、北京において中国政府の威圧の下で「17条協定」を強引に結ばされ、中国への併合を認めることになりますが、この協約は、ウィーン条約第51条(国の代表に対する強制)および第52条(武力による威嚇又は武力の行使による国に対する強制)に照らして無効となります。また、ダライ・ラマ14世自身も、後のこの協定を否定していますので、チベットの合法的な政府は、北インドの亡命政府ということになるのです。

 以上のことから、日本国政府、および、国際社会は、チベットが中国領ではない、という忘れられがちな認識に立ち戻るべきではないか、と思うのです。法的な根拠を示して説得しませんと、逆切れしている中国は、永遠に自らの過ちを悟ることはないのではないでしょうか。