時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日韓併合を非難しチベット併合を非難しない不思議

 国内外の市民団体と呼ばれる活動家の人々は、1910年の日韓併合については、散々に日本国を非難し、糾弾してきました。ところが、不思議なことに、中国が1951年に行ったチベット併合については、何らの非難の声も上がっていないのです。

 国際法の観点から見ますと、1951年の「17条協定」に基づくチベット併合の方が、日韓併合条約よりも、はるかに違法性があります。それは、1949年に国連憲章が成立しており、それ以降は、ウィーン条約の強制による条約の無効性が適用となるからです。もっとも、中国側は、自国の国連加盟は、1971年のことであるから、1951年当時では法的な拘束を受けないと反論するかもしれません。しかしながら、国連加盟は、国連憲章に記載された義務を引き受けることを意味しますし、また、たとえ、この協定に有効性が認められたとしても、チベット側が破棄を望めば合法的に終了することもできます(もちろん、実際には、ダライ・ラマ14世は、この協定を否定しています・・・)。

 かつて、韓国では、日韓併合条約の国際法上の無効性を提起したことがありましたが(国際法の議論では、合併当時では合法的な行為とする結論に至った・・・)、何故、マスコミを含めて、この中国共産党による非合法的で詐術的な行為を指摘しないのか、まことに不思議でなりません。この違法性こそが、中国のチベット領有を根底から覆す事実なのにもかかわらず・・・。