時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

チベット弾圧問題で明らかになった平和理論の破綻

 チベット問題について、日頃から人権擁護を唱えてきた市民団体が沈黙していることは不思議なことなのですが、中国の工作活動への協力者であったという可能性に加えて、実は、その依拠する平和理論そのものが、破綻したからではないか、と思うのです。

 何故ならば、チベットで起きた悲劇は、左派が唱えるようにな非武装・無抵抗主義では、もし、侵略を平気で行う国家が現われた場合、自国の主権を奪われ、自国民が、一方的に弾圧・虐殺されることが明白となったからです。左派勢力は、これまで、平和のために憲法第9条を守ろうと訴えてきました。しかしながら、現実に目の前で展開された事件は、この主張が、平和をもたらすものでも、国民に安全を約束するものでもないことを知らしめることになったのです。

 いかに崇高な理想であっても、それを踏みにじる者がいる限り、理想は実現はしません。左派の方々も、この事実を真摯に受け止めて、中国によるチベット弾圧を、どのようにしてやめさせることができるのか、真剣に知恵を絞るべきなのではないでしょうか。